私は、会社員時代に不動産の仕事をしていました。

仲間の鍼灸師から鍼灸院開設の相談を受けます。また、自身が練馬区から中野区へ鍼灸院の移転をしていますので鍼灸院移転の相談を受けます。先日も師匠から鍼灸院移転の相談を受け、お手伝いをしました。

鍼灸院を開くには、各市区町村の保健所への届けが必要となります。治療室(6.6㎡以上)と待合室(3.3㎡以上)を分ける等細かな規定を満たす必要があります。

また、行政への手続き以外にも独特な苦労があります。条件にあった鍼灸院を開ける物件は非常に少なく、探すのにとても苦労がかかります。理由を改めて考えてみました。

お灸の使用に際して「火」が使える物件がまずありません。火事を心配してのことだと思います。消化器も設置要件となっていますので、火事になることはないでしょう。火事になったという話は聞いた事がありません。マッサージ等の治療院が入っているマンションでも鍼灸院は、火を使うという理由からNGとなることが多いです。火が使えないということから本当に限られてしまいます。

居住用マンションですと、営利的な生業(なりわい)が認められにくいです。仮に事務所等が入っているマンションでも、不特定多数の人が出入りする鍼灸院等の業種は、嫌煙されます。このあたりの決まり事は、建物の管理規約で定められています。

看板の設置ができる物件が少ないです。建物に直接取り付けられる物件はほとんどなく、道路からの入口付近やエントランス等にも置ける物件も数少ないです。街で見かける看板が建物に取り付けられている物件は、店舗用の物件です。

店舗用の物件ですと上記のような条件を満たすものがでてきます。しかし、契約時に高額な保証金がかかりますので、資金を用意しなくてはなりません。鍼灸師は、鍼灸専門学校を卒業するのに500万円位の学費を使っているので、開業資金を抑えておきたいのが本音です。

その他、内装工事が認められないという場合もあります。建物の管理規約で内装工事が不可となっている場合や、大家さんの意向で間取りの変更等が認められないことはよくある話です。

不動産屋さんでも、直ぐに鍼灸院が設置できる物件であるかの判断は難しく、事が中々スムーズに運ばないもどかしさがあります。また1~3月の時期ですと、不動産屋さんの忙しい時期であり、めんどくさがられます。

鍼灸師は定年の無い職種です。健康であればいつまでも働くことができます。私も定年や引退などは、考えていません。

しかし歳をとってからの開業や移転は、「年齢」という理由から審査が通らず物件を借りることができないという現実もあります。